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東京地方裁判所 昭和28年(ワ)8135号 判決

原告 東野仁太郎

被告 株式会社日本勧業銀行

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告は原告に対し、別紙目録〈省略〉記載の株券及び株金払込領収証を引渡すべし。若しこれを引渡すことができないときは、被告は原告に対し、金六十一万六千五百円及びこれに対する昭和二十八年九月三十日から完済に至るまで年六分の割合による金員を支払うべし。訴訟費用は被告の負担とする。」との、仮執行の宣言つきの判決を求め、請求の原因として、かつ被告の抗弁に答えて、次の通り述べた。

訴外長尾精は被告(その京橋支店)から、(一)昭和二十八年六月三日金二十万円を弁済期同年八月三日の約定で、(二)同年六月九日金十万円を弁済期同年八月七日の約定で、それぞれ借受けた。原告は、その金銭貸借契約ができた際、被告の債権を担保するため、(一)の貸借につき別紙目録の(一)ないし(三)の株券を、(二)の貸借につき別紙目録の(四)の株金払込領収証をそれぞれ被告の京橋支店に差入れて、被告のため右株式に質権を設定した。しかるところ、長尾は同年六月二十五日(二)の借受金を、同月二十九日(一)の借受金を被告に弁済したので、被担保債権は消滅した。

よつて、被告に対し、担保物たる右株券及び株金払込領収証の返還を求め、若しこれを引渡すことができないときは、履行に代る損害賠償として、最終口頭弁論期日当時における右株式の価格に当る金六十一万六千五百円(昭和二十九年九月二十一日東京証券取引所終値における価格、即ち、一株につき、丸善石油株は九十三円、日本郵船株は八十円、日平産株は三十七円)及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和二十八年九月三十日から完済に至るまで年六分の割合による金員の支払を求める。

被告の抗弁事実中、被告が本件株券等を長尾に渡したことは知らない。その余の事実は争う。

本件株式を担保に入れるにあたり、長尾が担保差入書に原告の記名捺印の上右株券等を交付したことは事実であるが、しかし質権設定の手続というのは担保差入書に記名捺印して質物を交付するだけのことである。本件担保差入の際、原告は長尾とともに、本件株券等及び印鑑をもつて被告銀行京橋支店に赴き、同支店内において右株券等及び印鑑を長尾に手渡したところ、同人において質権設定に関する手続をすました後、直ちに右印鑑及び被告からもらつた担保品預り証を原告に渡したのであつて、長尾は単に原告の意思伝達の使者として行動したに過ぎない。仮に、原告が右長尾に代理権を授与したものであるとしても、その代理権の範囲たるや、質権設定に限られ、その他には及んでいなかつたのである。被告の主張する表見代理に関する事実もすべて事実に反するが、特に、被告の発行した担保品預り証(甲第一号証の一、二)には「御返金の節は裏面に御記名御捺印の上御差出候わば引換に担保品御渡可申候」と、また本件担保差入書(乙第一号証の一、二)には「第十二条、担保品預り証裏面に記名捺印の上担保品の返還又は交換を請求する者があるときは拙者の代理人とみなし御取扱願いたく、この場合後日如何なる事故を発見するも拙者において異議を申し出ない。」と記載してあるのに、被告は、担保品預り証と引換でないばかりか、原告の委任状も印鑑も所持していない長尾に対して、右担保物を返還したのである。これは銀行にあるまじき軽率な処置であつて、仮に被告が長尾に右担保物受領の権限ありと信じたとしても、そう信ずるについて正当な理由があつたということはできない。

以上の通り述べた。〈立証省略〉

被告訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求め、次の通り答弁した。

原告が請求の原因として主張する事実は、株式の価格の点を除いては、すべて認める。原告主張の株式の価格は知らない。

被告は、昭和二十八年六月二十五日別紙目録の(四)の株金払込領収証を、同月二十九日別紙目録の(一)ないし(三)の株券を、いずれも右長尾精に返還して、原告に対する返還義務を履行した。長尾に右株券等を返還したことによつて、原告に対する返還義務を履行したことになる理由は、次の通り。

原告と長尾は昭和二十八年六月初頃連れ立つて被告銀行京橋支店を訪れ、同支店長立林文二と面談した。その際、長尾は立林に向つて、右両名らが新しく不二産業株式会社を設立し、長尾が社長に、原告が営業部長になつたが、被告銀行との取引は長尾が担当する旨を述べ、原告もこれを肯定した。ついで、長尾は、同年六月三日別紙目録(一)ないし(三)の株券及び原告の印鑑を、同月九日別紙目録の(四)の株金払込領収証及び原告の印鑑を持つて、被告銀行京橋支店を訪れ、原告主張の金員を借受けるとともに、原告を代理して、右株券及び株金払込領収証を被告に差入れて、右債権担保のため右株式に質権を設定した。その後、原告は長尾の権限に関し何ら被告に連絡するところなく、一方長尾は、昭和二十八年六月二十五日及び同月二十九日の債務弁済の日、被告に対し、原告に代つて担保株券等の返還を受ける旨の意思を表示したので、被告は、右担保物の返還を受けることにつき長尾が原告を代理する権限をもつているものと信じて、右株券等を長尾に返した。以上は本件に関する長尾、原告側と、被告側との交接の外部にあらわれたところである。

(一)  長尾は、本件株式等について、原告に代つて、被告との間に、質権の設定及びこれに伴う一切の行為(本件株券等の返還を受けることを含む)をする権限を、原告から与えられていたから、被告が本件株券等を長尾に返還したことは、原告に返還したと同じことになる。

(二)  原告は長尾に対し、一旦は本件株式に対する質権設定及びこれに附随する株券等の返還を受ける権限を併せ与えたものである。仮に長尾の権限が、右質権を設定すると同時に消滅したとしても、被告は右代理権消滅の事実を知らず、これを知らぬことに過失はないから、長尾に本件株券等を返還したことは、民法第百十二条により原告に返還したと同じことになる。

(三)  原告と長尾が昭和二十八年六月初頃被告銀行京橋支店を訪れ、同支店長立林文二と面談した際、原告は長尾が言つた前記のことを肯定した。この事実は、原告が被告に対し、原告の関係する被告銀行との取引については、長尾に包括的な代理権を与えた旨を表示したことを意味するところ、長尾のした本件質権設定及び本件株券等受領の行為は、原告が与えた旨表示した権限の範囲内に属するものであり、被告は本件株券等の受領につき長尾に代理権ありと信じ、かく信じたのはもつともであるから、実際原告が本件担保物の返還を受ける権限を長尾に与えたと否とに拘らず、被告が長尾に右株券等を返還したことは、民法第百九条により、原告に返還したと同じことになる。

(四)  仮に、長尾の本件株券等の受領のみは原告の授権の範囲外であるとしても、それは長尾が原告から与えられた権限を越えてやつたことであるところ、被告は右長尾にその受領権限があると信じたのであり、かく信ずるにつき正当の理由があつた。即ち、原告は被告銀行京橋支店に対し、長尾とは共同して会社を創立し、その業務を執行し、互に信任関係に立つている旨表示し、かつ被告との取引事務一切を長尾が担当する旨を告げ、更に、右長尾に対し四千株に上る本件株券及び原告の印鑑を託し、原告を代理して被告との間に質権設定契約を締結せしめ、その後、右代理権の消長につき何ら被告に連絡しなかつたのであるから、被告が、本件株券等の受領につき長尾に代理権ありと信じたのはもつともである。したがつて、本件株券等を長尾に返還したことは、民法第百十条により、原告に返還したと同じことになる。

以上の通り述べた。〈立証省略〉

理由

長尾精が被告(その京橋支店)から、昭和二十八年六月三日金二十万円を弁済期同八月三日の約定で、同年六月九日金十万円を弁済期同年八月七日の約定で、それぞれ借受け、原告が、右貸借ができたつど、右債権を担保するため、前者につき別紙目録の(一)ないし(三)の株券を、後者につき別紙目録の(四)の株金払込領収証を、被告の京橋支店に差入れて、被告のため右株式に質権を設定したこと(質権の設定が原告の代理人たる長尾によつて行なわれたか否かはしばらくおき)、長尾が同年六月二十五日後者の借受金を、同月二十九日前者の借受金を被告に弁済したことは、当事者間に争いがない。

そして乙二号証の一、二(証人長尾精の証言によつて真正にできたと認められる)と証人長尾精、桜井礼三の各証言とによると、被告の京橋支店貸付係員桜井礼三は、長尾精が原告に代つて本件株券等の返還を受ける権限をもつているものと信じ、長尾が前記債務を返済した際、前記株券等を同人に返還したこと、即ち昭和二十八年六月二十五日別紙目録の(四)の株金払込領収証を、同月二十九日別紙目録の(一)ないし(三)の株券を長尾に返還したことが認められる。

よつて、右株券等を長尾に返したことによつて原告に返したと同じ効果が生ずるか否かについて判断する。

甲第一号証の一、二、乙第一号証の一、二(いずれも真正にできたこと争いない)と、証人長尾精、原告本人の各供述とを合せ考えると、次のとおり認められる。昭和二十八年五月末頃原告がかねて知合の長尾精を訪ねたところ、長尾は原告に向つて「新会社をつくつていつしよに事業をやろう。金融機関方面には知友もいて相当やれる自信がある。何か仕事があれば銀行にわたりをつけて金融を受けることもできる。」と話しかけた。当時、原告は、丸善石油株式会社の新株払込金の調達に迫まられていたので、取敢えず、その金策を長尾に頼んだ。長尾は金融を受けるに必要な担保物件として、原告のもつていた株式中、丸善石油株三千株、日本郵船株五百株、日平産業株五百株をあげ、これを担保に入れるように勧めた。なお原告が銀行方面に明るくなかつたところから、金は原告の右株式を担保として長尾が借受け、長尾から原告がその必要とする金員を借り受けることに、両者間で約束がととのつた。同年六月三日長尾は原告とともに被告銀行京橋支店に赴き、原告から、原告に代つて質権設定行為をすることを頼まれて、前記株券(長尾の勧めで原告がもつてきた)と原告の印鑑とを受取り、原告を階下に待たせたまま一人で同銀行貸付係員に面接し、金員借受、質権設定の手続をすまし(乙第一号証の一はその時入れた担保差入書)、係員から担保品預り証(甲第一号証の一)を受領したうえ、階下で待つていた原告に右預り証と原告の印鑑とを渡した。その後、原告は再び別の新株払込金及び借受金利息の支払金を調達する必要から、長尾に金策を依頼し、長尾は、同月九日被告の京橋支店において、原告から、前同様原告に代つて質権設定行為をすることを頼まれて、丸善石油新株式払込金領収証と原告の印鑑とを受取り、前同様の方法によつて金員借受、質権設定の手続をすまし(乙第一号証の二はその時入れた担保差入書)、被告の係員から担保品預り証(甲第一号証の二)を受領したうえ、待つていた原告に右預り証と原告の印鑑とを渡した。以上のとおり認められる。

これらの事実によると、原告は、長尾が被告(その京橋支店)から金員を借受けるにあたり、その担保に供すべき本件株券等及び原告の印鑑を長尾に渡して、原告に代つて質権の設定行為をすることを頼み、この授権によつて、長尾は、原告の代理人として被告との間に、本件質権設定契約を締結したものと認めるのが相当である。この点について、原告は、「本件質権設定については長尾は単に原告の意思伝達の使者として行動したに過ぎない。」というが、この見方には賛成できない。

ところで、被告は、「長尾は、本件株式等につき、質権設定行為のほか、これに伴う一切の行為(担保株券等の返還を受けることを含む)をする権限を、原告から与えられていた」と主張するが、これに符合するような証人長尾精の証言は、原告本人の供述に照して信用することができず、他に右事実を認めるに足る証拠はない。かえつて、原告本人訊問の結果と、前認定の、質権設定手続終了後すぐ長尾が原告にその印鑑及び担保品預り証を渡した事実とによると、長尾に与えられた権限は質権設定行為に限られていたと認めるのが相当である。

また、本件株式を目的とする質権設定行為につき代理権を与えられたことによつて、本件株券等を受領することについても長尾に権限があることになつたとすることも正当でない。長尾が権限の定めのない代理人であるならばしばらく別であるが、本件においては、既に認定した如く、長尾は、質権設定行為に限つて代理権限を与えられたからである。

次に被告は、「原告と長尾が昭和二十八年六月はじめ被告の京橋支店を訪れた際、原告が同支店長立林文二に対し、原告と被告との取引について長尾に包括的代理権を与えた旨表示した。」と主張するが、これに符合するような証人長尾精、立林文二、桜井礼三の各証言は、証人松沢彬、原告本人の各供述に照して信用することができない。他にその事実を認めることができる証拠はない。

被告は、また、長尾の本件株券等の受領につき、民法第百十条の表見代理の規定の適用を主張する。

原告が本件株式に質権を設定するにあたつては、二回とも、長尾が、原告の印鑑及び本件株券等を持つて被告の京橋支店貸付係を訪れ、金員を借受けると同時に、原告の代理人として、右株式を目的とする質権設定契約を締結したことは、さきに認定したとおりである。

また、証人長尾精、松沢彬、原告本人の各供述を合せ考えると、次のとおり認められる。原告と長尾はかつてつばさ工業株式会社でいつしよに働いたことがあつて(原告は課長、長尾は取締役)、旧知の間柄であつたが、前記第二回目の金員貸借ができた前後の頃から、共同して鉄鋼材の売買を営業目的とする株式会社をつくろうと相談し、その準備を進めていた。その間、新会社の商号は不二産業株式会社とすること、長尾はその社長に就任し、原告は営業関係を担当すること、金融は長尾の旧友立林文二が支店長をしている被告銀行京橋支店から受けること等を両者間で定め、そして、原告は長尾に対し、「被告との金融上の交渉にはあながあつてもらいたい」と申出た。その設立準備中の昭和二十八年六月十四、五日頃、右両名は、新会社の経理担当と予定していた松沢彬を伴つて、被告銀行京橋支店へあいさつに赴いた。その際貸付係員桜井に対し、原告は、「長尾と新しく不二産業株式会社をつくつて事業をはじめることになつた。銀行と取引したいからよろしく願う」と挨拶をして名刺を出し、また長尾は、「原告は営業関係を、松沢は経理関係を担当し、自分は社長として仕事をする。」と説明した。その後も原告と長尾間の相互信頼関係はつづき、事実上会社としての仕事もし不二産業株式会社名義で被告の京橋支店と取引もしたが、昭和二十八年八月に至つて両者間の関係がこじれ出し、ついに正式に会社の設立をみるに至らなかつた。以上のとおり認められ、証人長尾精、立林文二、桜井礼三の各証言中この認定に反する部分は信用することができない。

以上争いなき事実及び証拠で認定した諸事実によると、被告銀行係員が、長尾に、原告を代理して本件株券等の返還を受ける権限があると信じたのはもつともであり、かく信ずるについては正当な理由があつた、ということができる。

もつとも、さきにあげた甲第一号証の一、二(担保品預り証)には「御返金の節は裏面に御記名御捺印の上御差出候わば引換に担保品御渡可申候」と、また乙第一号証の一、二(担保差入書)には「第十二条、担保品預り証裏面に記名捺印の上担保品の返還又は交換を請求する者があるときは拙者の代理人とみなし御取扱願いたく、この場合後日如何なる事故を発見するも拙者において異議を申し出ない。」と記載してあること、原告のいう通りであるが、右は、担保品預り証の裏面に記名捺印の上差出す者があれば、被告はその者に担保品を返還することができ、かつそれによつて、返還債務を免れうるという、いわゆる免責約款的の趣旨をあらわすものであり、右担保品預り証は担保品の返還を請求する者が果して真実の権利者であるかを調査するにつき困惑する立場にある被告銀行のためにつくつた、これを持参した者には担保品を返してもよいという意味における受領資格をあらわす証明証書である、と認めるのが相当である。したがつて、債務者たる被告が、自ら進んで真正の受領資格者を発見し、この者に返還するときは、その者がたとえ右証書をもつていない場合でも、返還義務を履行したことになるのであつて、右証書を持つてこない以上真正な受領資格者に対しても返してはならないとまで考えるべきではない。証人立林文二の証言によつても、被告銀行における担保品預り証の取扱としては、通常相手方が面識のある者で、真正な権利者と違わないことが判れば、預り証は後から持参してもらうことにして、預り証と引換でなく担保品を返還しており、また、たとえ預り証を持参しても、見知らぬ、信用のはつきりしない人に対しては、担保品を直ちに返還することはせず、一応調査した後に返還する、というように慎重に扱つていることが認められる。これも、当裁判所の以上の見方が必ずしも独断でないことを裏書する一資料といえよう。

被告としては、たとえ右預り証を示されなくても、原告又は原告の真正代理人から返還を請求された以上、担保品を返さなければならない。しかりとすれば、原告の代理人と同視してよい者があらわれば、たとえ右預り証を持つていなくとも、やはり担保品を返していいことは、当然である。

本件においては、前記のとおり、二回の質権設定に当り、原告は被告の京橋支店にあらわれず、長尾が原告を代理してその衝に当つており、そして長尾と原告の間には前記のとおり、信頼関係があり右両者の関係として前記のとおり被告に表示されていたのであるから、被告が、本件株券等の受領については質権設定行為の引きつづきとして長尾に権限ありと信じたのはもつともである、といわなければならない。担保品預り証を所持しなかつたということも、長尾に代理権ありと信ずるにつき正当の理由があつたか否かをきめる一資料であるには相違ないが、右預り証の性質が以上のごときものである以上、長尾がこれを持つていなかつた本件においても、長尾に代理権ありと信ずべき正当な理由はあつた、と当裁判所は考える。また、長尾が本件株券を受領するにあたつて、原告の印鑑や委任状を持参しなかつたことも、必ずしも右株券等を受領する権限が長尾にありと信ずるにつき正当の理由があつたと認定することの妨げとなるものではない。なお、被告銀行係員が長尾に本件株券等を返還した当時、長尾の代理権限(即ち右質権設定の権限)はすでに消滅していたものとみなければならないこと、さきの認定によつて明かであるが、被告が長尾の右代理権消滅の事実を知らなかつたこと、また被告が右事実を知らないことにつき過失がなかつたことは、長尾に代理権ありと被告が信ずべき正当な理由があつたことの説明として述べたところによつて明かであろう。このように、かつてもつていた代理権の範囲を越えて代理行為をした場合においても、いやしくも代理権ありと信ずべき正当の理由がある限り、民法第百十二条第百十条を同時に適用して、現に有する代理権の範囲を越えて行為した場合と同じに扱うのが相当である。

結局、被告が長尾に本件株券等を返還したことは、原告にこれを返還したと同じ効果を生ずるのであるから、被告の抗弁は理由がある。

よつて、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく失当として、これを棄却すべく、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 新村義広)

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